トリミング

 

 

水草水槽を維持していく上で、水景のデザインということを抜きにして最低限の維持のことだけを考えてもトリミングは欠かせないですよね。

 

水草が成長しないようでは、いずれは死んでしまうだけですし、成長すれば水槽を一杯にしていってしまうし。

 

水流が悪くなるし、後景の草が覆いかぶさるように伸びてしまえば前景草は弱っていくし、前景草は積み重なっていけば、下のほうが傷んでくるし。

 

なので、適切なタイミングでトリミングをしていくことになります。

 

トリミングの前後

水草水槽は...特に陽性の成長力のある水草が大量に入っている場合は、水中の窒素やリンなどの消費のかなりの部分を水草が担っています。

そこで、大量に水草を切るとどうなるか?
当然、窒素やリンの処理能力がガクンと落ちます。

なので、ある程度以上の量を切る時は、その前後の時期を通して以下は控えたほうが良いと言えます。

  • 即効性の肥料(液肥)の添加
  • フィルターの掃除

また気をつけていても、大量に水草を切ったあとは水質が悪化して油膜や白濁などの症状が出ることも有ります。

水草の処理能力が落ちた分だけ、硝化バクテリアがアンモニア処理などをしてくれれば良いのですけど、硝化バクテリアが増えたアンモニア量に対して充分な量に増えていくには3−4日の時間が必要です。

なので、トリミング時には水換えを同時に行い水中の栄養分を減らしておいたほうが良いですね。

それにだいたいトリミングすれば少しは汚れも舞い上がるし。

 

またトリミングをして、その後に水換えをする時には、トリミングクズを丁寧に取った方が良いです。

水面に浮いている葉切れ、水草に水流で引っかかっているもの、給水口あたりに集められいるもの...これらの葉クズを全部キレイに取りましょう。

これらは良い炭素源ですから有機栄養バクテリアのエサになり、またアンモニアなどの元になり、硝化バクテリアの負担を増やします。

小さな小回りの効く柄のついたネットを用意して、掬い取ったり、給水口周りなどはプロホースを使うなどして丁寧に取りましょう。

 

さらに、トリミング後に顕著に水質の悪化サインが出るようなら、しばらくエサの投入量を絞るってのも手です。

ある程度こなれた水槽なら、エサは水槽内にいくらでもありますし、そうじゃなくても3−4日エサをあげなくても健康な魚ならなにも問題ないですし。

 

有茎草のトリミング・差戻し

ロタラなどの有茎草は環境があっていれば、どんどん成長して最後は水面を這うようになり・あるいは水面から上に顔を出して水上葉を出すようになります。

こうなると、下の方には光が行かなくなるし、水流も遮るようになります。

有茎草が密集しているなら、大きなハサミで「面」としてまとめてザクザク切っちゃえば良いのですけど、問題はどの高さで切るかです。

 

どうしても「このくらいのカタチにしたい」っていうラインで切りたくなっちゃいますけど、実際に理想的なのはそれよりずっと深く切ることですよね。トリミング後の成長を見越して。

新しい芽は残された部分が持っている栄養を元に行われるので、短くし過ぎるといじけちゃったりもするのですが、切るところより下に葉が残っているなら、5cmも残っていれば充分です。バッサリ行きましょう。

特に最初にトリミングする時は、気持ち短めに切りましょう。

新芽は、切り口の少し下のところから複数出てきて枝分かれして上の方のボリュームを豊かにしてくれるわけですが、あまり上のほうで切ると、また折角枝分かれした下のあたりから切らなきゃならなくなりますよね。

やっぱり理想的なのは、下の方はスカスカでよく水が回り、上に行くほど枝分かれが進んで密にボリューム感があるというのが良いでしょ?

そうするためには、1回目より2回目、2回めより3回めの切る場所が上じゃなきゃならないわけですから、最初に短く切っておかないとダメってことになりますよね。

 

そのうちに「こりゃトリミングしたら下は棒しか残らないな」なんて感じで、下の方の葉が完全に落ちてしまって弱った状態になると、切った後の復活も遅くなるし、黒ヒゲとかも出やすくなるし、あまり良いことはないので、こうなったらほぼ根本から切っちゃって差し戻ししましょう。

 

根っこごと抜くというのは、底床の汚れを巻き上げるしやらないほうが良いですよね。

それにどうせ底床内はいずれ炭素不足・窒素不足になるんです。少しでもこれを回避するために、根はそのままにしておいて良いのじゃないでしょうか?
私はそうしています。

 

ところで、上のほうが元気なのに、下葉がどんどん落ちていくというのは、長い時間かけて起きるなら問題ないのですけど、短期間にそれがどんどん進むようなら、大抵はカリウム不足です。...ここのテーマと外れるのでここでは書きませんが、肥料関連の記事を適当に見てください。

 

ロタラの場合のトリミングサイクルは...あくまでもうちの場合ですけど、

  • トリミング
  • 数日後によーく見ると分かる小さな小さな新芽が出てくる
  • 1週間くらいで小さな新芽が目立つようになる
  • その後、グングン伸びていって
  • 3週間弱で「伸びすぎた」って状態になって
    またトリミング

って感じです。

 

前景草のトリミング

グロッソヘアーグラスキューバウォーターローンニューラージパールグラス... こういった前景草は、思ったところの高さまでただバッサリ切っちゃって大丈夫です。
気分は芝刈りですね。

 

積み重なっていくと、下の方はどうしても痛んだ葉が出てくるし、それが黒ヒゲとかの原因になるし、定期的に切るしかありません。

 

例えば、グロッソなら3-4段分くらい折り重なったら1−2段分を切っちゃった方が良いです。

グロッソとかまだ良いんです。少し暗いトリミングのタイミングを外しても下の方のランナーや根が生きていて簡単に再生してくるから。

ある程度重なってきたら「必ず」切ったほうが良いのはキューバですね。キューバパールグラスは成長も遅いし、もうちょっともうちょっとって先延ばしにしてて、かなりの厚みが付いちゃってから切ってみたら、底の方は腐ってて根さえろくになくて、全部丁寧に再植するしかありませんでした...なんてことになりがちです。心を鬼にして、できるだけマメに切りましょう。
というか、私は割りとしょっちゅう失敗してます。
後から、「もっと早く切るべきだった」って後悔することがしばしばです。

 

底のほうが特に傷みやすいのは、ニューラージパールグラスも同じですね。底の方というより、あれは先が底の方に潜り込んだりしたりもするので、根元のほうが傷みやすいという言い方のほうが正しいですね。
これは見るからに有茎草が寝ながら匍匐しているし、けっこううねったりもするので、漫然と高さを揃えてバッサリ切ってると、茎の途中が切れちゃったりということもあるかもしれませんが、大丈夫。いろいろなところから根が出てるわけだから。細かいことは気にしないで高さを揃えて切っちゃいましょう。むしろ切ったほうが枝分かれするのでキレイに広がります。

 

前景草も下のほうの痛みが早い場合は、まずはカリウム不足を疑いましょう。適切にカリウムやその他ミネラル(マグネシウム・マンガン・鉄など)の供給がなされていれば、そんなに簡単に黄色く傷んだりしないです。

ただ、密生したキューバやニューラージパールグラスの底の方は見えてないところなので、トリミングして気がつくってことも多いんですけど。

 

 

前景草は、殆どの場合、前面ガラスに接しているのですけど、このガラスに接している部分はライトの輻射とかもあるので厚みが付きやすいですよね。

それから、前面ガラスとソイルの間に藍藻とか出ていたりすると、ガラスに接している前景草が厚みがついていて水が動かなくなっていたりすると、藍藻が這い上がってきたりしやすくなります。

なので、この部分はほんのちょっとだけ残して殆どソイルのところまで切っちゃったほうが良いです。

 

最初にこの一番手前を切っておくと、全体の厚みの感覚もつかみやすいので、まず最前面を切って、その後に後ろの方を整えるように切るって感じで進めると良いと思います。

 

前景草を切るハサミは、先がカーブした専用の物が出ていますけど、私は持っていないですね。
もっぱら赤ちゃんの爪切りバサミを使ってます。
使いやすいですよ。

 

前景草は、ソイルの栄養が充分なうちは、グロッソとかの成長も速いので「切らなきゃ!」って思うんですけど、底床の栄養が切れて伸びが遅くなってくると、ついつい放置しちゃうんですよね。そうすると気が付くと奥のほうが傷んでたりして、かえって面倒なことになったり。

成長遅目になっても、やっぱりたまには切らないとダメですよね。

 

ロゼット型・テープ状の水草のトリミング

テネルス、ピグミーチェーンサジタリア、クリプトコリネ...

こいつらは地中深くに張り巡らせたランナーで、元気だとそこら中から出てきますよね。

こういう根張りが良いのは、抜くのは無理ですね。
底床内の汚れを巻き上げるだけじゃなくて、ずるずると根とランナーが地中深くから巻き上げられて意図しない範囲まで傷んじゃいます。

私はただひたすら根元付近からチョッキンしちゃうだけです。
サジタリア(オモダカ科)の系統のは、葉っぱを綺麗に抜けるものもあるので、周囲を抑えながら葉っぱを引き抜くってことをすることもあります。

 

ブリクサのトリミング

ブリクサは知ってるのとおり、一瞬ロゼット型に見えて、よく見ると寸詰まりの有茎草なんですよね。

枝分かれで増える。

こいつのトリミングは難しいですよね。いや、枝の根本からむしれば良いわけだから、簡単だと言えば簡単なんですが、例えば、綺麗なドーム型に成長したブリクサがあったとして、枝をむしって半分にしようとすると、
手前からむしっていけば、半ドーム、周囲をむしれば、細長くシュっと立ち上がった葉がでているだけ、上をむしれば...って結局ドーム型を維持するのは無理で、すごくみっともないカタチになっちゃうわけです。

結局は、根本からバッサリ切って、幾つかに取り分けて、差し戻しするってやり方しかないですよね。
少しはカタチを考えたら。

それでも、なかなか上手くは出来ない。...どうしても不自然になっちゃうんですけど。

ブリクサの枝をカットしていく時に気をつけたほうが良いのは、茎をカットしても茎の途中から出ている根が想像以上に長く深く地中に這い進んでいることがあって、カットできたと思って手で引っ張りあげると、かなりの汚れを底床から引き出しちゃうことがある...場合によっては前景草を巻き込むこともあります。

巨大化したブリクサだと奥のほうで茎の途中から根を出しているので、根の存在も忘れないようにしたほうが良いですね。

それとブリクサは、トリミングし過ぎるといじけるというか上の方から枯れてきちゃうこともあります。

もしかしたら、ブリクサの茎って柔軟性が低くてポキって折れやすいので、いじってるうちに下の方の茎が知らないうちに痛んでるとかってことなのかもしれませんけど。

とにかくあまり揺さぶりまくると弱ったりするので、ブリクサを枝ごとにカットする場合は、細くて長いハサミをそっと差し込んで、全体を揺さぶらないように目的に枝だけを静かにカットするようにしましょう。

このあたりを気をつけていると、そんなに簡単に弱ったりはしないです。

 

ブリクサは、基本的には枝単位で切っていくわけですが、
やっぱりけっこう面倒ですよね。
出来れば避けたほうが良いとは思いますけど、「もう面倒でイヤだ」って思ったら、葉の途中からだろうとなんだろうと気にせずボリューム感のイメージだけでカットしちゃっても、大丈夫って言えば大丈夫です。
例えば、この写真はそうやってカットしちゃった場合の4日後の姿です。既に新葉がかなり出てますよね。

環境にもよるでしょうけど、2週間もすれば綺麗に元通りになります。 

ただこのやり方はブリクサにあまり元気が無くて同時に黒ヒゲが元気って時は避けましょう。途中から切った葉は切り口が傷みやすくて、そこに黒ヒゲがつきやすくなるからです。
元気なブリクサは切り口の傷みも少なくてスグに新葉が展開するので大丈夫ですけど。

 

その他 一般的な切り方についてのアドバイス

実際にトリミングに取り掛かる上で、以下の点を意識して・総合的に判断して全体をカットしていきましょう。

  • 前を短く、後ろを長く。傾斜を付けてカット。
    水景の見栄え、水流、照明などを考えれば、自然とそうなりますよね。
  • 但し、明るさ・照明からの距離を意識。
    よく照明が当たるところ...下よりも上のほうが早く伸びるので、そのあたりを意識してカット。
    つまりあくまでも全体は前を短めに奥を眺めにするのだけど、そのまま全体が伸びるとは思わないで、水面に近いところ(≒後ろの方)ほど、伸びた時の割合としては短めにするということですね。
  • 水草の種類別の伸び率を意識して、早く伸びる種類の水草ほどより短くカット。例えば、グリーンロタラとロタラインディカなら成長が早いインディカをより短くカット。

 

トリミング後の回復・トリミングのスケジュール

水草の種類にもよりますし、水槽環境にもよるわけですが、例えばうちの環境でロタラやグロッソのような比較的成長が早い水草の場合だと、
トリミングしてから綺麗な新芽が芽吹いてある程度の大きさまで復活するってのに10日〜2週間くらいです。

最初のトリミング前・後の写真で、またトリミング前と同じくらいに成長するのが3週間弱って感じですか。

 

数日でよく見ると小さな新芽が出ているなって状態になり、

1週間くらいで新芽の成長が加速し始めたように感じて、

2週間くらいでロタラなら元通り、グロッソなら1段分新しい葉が生えそろったって感じになるってくらいのペースです。

 

自分の水槽のトリミング〜回復の間隔が分かれば、ある程度はスケジュールを立てることも出来ますよね。

 

1ヶ月にいっぺん全面的にハサミを入れるなんてことをせずに、
出来れば、今週はここをちょっと切る、来週は、再来週はって、ローテーションしていくのが良いですね。

 

トリミングって、気持ちの問題が大きいですよね。
水草水槽を始めた頃はなかなか思い切って切れなくて、後で切らなかったことを後悔するようなことが度々ありました。

以前よりは思い切ってきれるようになったとは言えるけど、今でもよく切るタイミングを遅らせ過ぎたなとか切るのが浅すぎたなとか後悔してたりします。

一度でも溶かしたことがあるような水草とか、増やすのに苦労した経験があるものとかは、どうしても躊躇しちゃいますよね。

結局、トリミングが一番経験の蓄積がわかりやすく出ちゃうところなのかも知れませんね。

 

それから一度理想の水景が出来て写真が撮れれば良いのだという人はともかく、水草水槽はちゃんと長期に維持できてこそって思うのなら、理想の水景とちょっと離れてでも水景デザインの複雑さは避けるべきだと思います。

そもそもが「トリミングが苦にならないレイアウト」にしておくってこと大事だと思いますよ。

うちの水槽は大抵のトリミングは30分以内に簡単に終わるような構造になってます。

 

コメント: 6
  • #6

    管理人 (土曜日, 02 4月 2016 16:44)

    良かったです。余計な心配でした。
    今は、水上葉栽培を始めるのに良い季節ですよね。

  • #5

    つつつ (土曜日, 02 4月 2016 16:18)

    プランターは穴のないものを買ってきましたので大丈夫です。水中ではなかなか花を見る機会がない(ブリクサから少し出ていたくらい)ので楽しみです。

  • #4

    管理人 (土曜日, 02 4月 2016 15:57)

    うっ!プランターですか。
    ならば、底の穴を塞がないと。
    水上葉が出てくるまでは、水に浸り続けてないと枯れちゃいます。
    最初だけは、がんばって水面を維持してください。
    もっとも湿り気さえ常にあれば、一旦葉が枯れてもスグに新芽が出てきますけど。
    ロタラはピンクの小さな花を沢山咲かせますよ。

  • #3

    つつつ (土曜日, 02 4月 2016 15:41)

    返信ありがとうございます。
    水上栽培をしてみようと思います。
    先ほどホームセンターでプランターを購入して来ました。
    鳥などに食べられないといいですが。

  • #2

    管理人 (土曜日, 02 4月 2016 14:43)

    1.人にあげる。
    2.廃ソイルを敷いた箱に植えて水上葉栽培する。ロタラなら冬も越せます。...冬に枯れちゃいますが、翌年またちゃんと出てくる。
    3.腐葉土をつくる。
    ちょっと乾かして枯らしてからバケツに突っ込んでフタをしておくだけ。半年〜1年でさらさらの粉になります。
    発酵の温度上昇が足りないと虫が湧くことがあるけど、最悪レンジでチンすれば使える。
    次にリセットするときに、パミスに混ぜて使う。
    水上葉育成の時やスイレン鉢とかをやるときに廃ソイルの下に入れておく。
    4.諦めてゴミにする。

  • #1

    つつつ (土曜日, 02 4月 2016 10:19)

    トリミング後に余った水草はどうしていますか?先ほど久しぶりにロタラのトリミングをしたら、サテライトS1杯分くらい余って困っています。(捨てるのはもったいないですし)
    何かいい方法があればお教えください。