ミナミヌマエビ・ヤマトヌマエビ

 

コケ対策生物兵器のところでも基本的なところは書いているけど、こちらはコケ対策視点というよりは、飼い方に関連するところを説明します。

とは言っても、私自身がそれほど自慢できるような飼い方が出来ていないのだけど。

水草水槽をやっていると...特に高回転型の維持をしているとエビにキツイ...中でもヤマトヌマエビにキツイ環境になりやすいと思っています。低速型の方はエビを落とすなんてことは滅多にないのですけどね。

基本的なところを確認する前に先にこの点についてザックリ説明してしまうと、水草水槽...中でも高回転型の場合は...

  • スグに(あるいは最初から殆ど)コケが出なくなるので、
    エサ不足に陥りやすい。...コケ予防の意識が強すぎてついついエビを入れすぎてしまう。おまけにエサは少なめにしてしまう。
  • 弱酸性で維持することが多い。pH調整で例えばちょっとピートモスを入れすぎてpHを落とし過ぎたりするとエビにはキツイ。pHなどの水質の適応範囲はそれほど狭くないのだけど、水質の急変に弱い。これは殆どの魚や水草も同じだが、エビは特に水質の変化に弱い。
  • 水質の変化という点では、肥料の使用...中でも窒素系液肥は魚などにまったく問題ないレベルでもエビには影響することがある。
  • 水換えの頻度が低くても維持しやすいということも結果的に影響する。1/3程度の水換えでも、たま〜に水換えをするようだと変化が大きくなりすぎる。水換えをするなら頻繁に少しずつ行ったほうが良いのだけど...
  • いっきに大量にトリミングすること自体が、水質をけっこう変化させることもある。
  • 新規に導入する水草自体に農薬が付いていることもある。
    魚には影響はなくてもエビにはとにかくキツイ。

こんな理由でエビにはキツかったりすることもあるのだけど、比較的変化を少なくしやすい低速型だと比較的エビが飼い易かったりもするわけです。

 

上で書いていることと矛盾するようなことも含まれるけど、水草水槽がエビにとって良いという面もあります。

  • 適切なCO2添加を行っていて水草が高成長していれば、エアレーションなどでは確保できないような高い酸素濃度を維持できる。
  • 水草自体が水質浄化に大きく寄与している。
  • 特に柔らかい水草や枯葉はエサになる。

 

つまり、水草を入れていて、水質変化を出来るだけ少なくしてやると良い環境になるわけですね。

水換えは少量を頻繁に行うとか、施肥は出来るだけ適量を頻繁に行うとか、そもそも施肥を行わなくても済むような水草...ウィローモスとかばかりを育てるとか... そんなことをすれば良い。

でもねー、リクツは分かっていても、どうしても水草優先で考えてしまうし、マメにやりきれないので、エビにはキツイ環境になっちゃったりするんですよね。

 

では、ミナミヌマエビとヤマトヌマエビがどう違うのかを見てみましょう。どちらのほうがより自分の水槽に相応しいかの判断に使ってみてください。

   ミナミヌマエビ* ヤマトヌマエビ
分類 カワリヌマエビ属 ヒメヌマエビ属
サイズ オス 2cm程度
メス 3cm程度
オス 4cm程度
メス 最大6cm程度
分布  静岡以西
*中国・台湾・朝鮮
千葉以西
インド・太平洋の沿岸部
 止水・流れの緩い場所 中流・上流の酸素が
豊富なところ
温度 かなり幅広く適応
凍結しない程度〜
夏場のスイレン鉢
ミナミより適応幅が狭い
酸素濃度にもよるが

27-8度以上で体調を崩し
始める
pH他
水質
低めのpH...5とかにも
対応 適応幅が広い
富栄養環境にも強い
低めのpHは嫌う
中性〜弱アルカリ
ミナミよりも富栄養環境
・低酸素環境が苦手
繁殖 水槽内繁殖可能
大型卵で 幼生時代を
卵の中で過ごし
2mm程の稚エビとして
孵化
水槽内繁殖不可
小型卵で、幼生の成長
には海水が必要
両側回遊型
脱走 飛び跳ねて水槽外に
出ることがある
陸上では跳ねるだけ
つかまれるものがあれば
歩いて水槽外へ出る
ことがある
陸上をしっかり歩ける
寿命 1年程度?? 10年以上の例も多い

*:本来「ミナミヌマエビ」と呼ばれるのは日本固有種だけだが、実際にショップで販売されているものは、ほぼシナヌマエビなどの亜種関係にあるもの。レッドチェリーシュリンプやアルジーライムシュリンプなども亜種関係にある。=交雑する。

ミナミとヤマト。どちらも比較的丈夫で飼いやすいエビだと言われますが、上の表をざっと眺めてもらうと分かるように、ミナミヌマエビの方が遥かに適応環境の幅が広く、ヤマトの方が繊細です。

特にヤマトは、高い水温、低酸素、低めのpH、汚れた水などにやられやすいと言えます。

さらに、ミナミヌマエビは水槽内で勝手にどんどん増える...というかエサの量などで増えたり減ったりを繰り返してくれるので適切な数を維持しやすいのですけど、ヤマトは水槽内で繁殖できないので、何かあって落としたりしちゃうということを繰り返すとジリジリと減っていくだけです。本来の寿命はかなりながいんですけどね。

つまり、ヤマトはしっかり管理しないと使い捨てになってしまうので可愛そうなんですよね。なのでミナミヌマエビを優先したほうが良いのではないかと思っています。

 

「しっかり管理しないと」と書きましたが、ヤマトを長期維持している人って...友人のところとかメスがみんな5cm以上のサイズにまでなっていたりするのですけど...水槽をあまり「いじらない」って人が多いという印象です。最初に書いていますけど、とにかく水質の「変化」に弱いですから。

 

ミナミヌマエビの弱点は、強い水流があまり得意ではないということくらいですか。やはりよく繁殖してくれるのは止水に近い環境です。スイレン鉢とか。

もっともうちのメインの水槽は、かなり強い水流にしているのですけど、ちゃんとミナミヌマエビは繁殖しています。

...エサの量や水量などを考えると常に数は少なめですけど。

ひとまず水草が生い茂っていれば、水流が弱まるところは沢山できますから。

 

繁殖をさせるのには、

  • 最低限ちゃんと水が出来ていること(硝化サイクルができていること)。その他水質などに問題がないこと。
  • 稚エビが隠れるところが豊富にあること。
  • 少しは柔らかい緑藻が出ているなどエサがあること。

という感じで、とても簡単で勝手に増えてくれます。

 

特に最初に導入したものより、その水槽で稚エビとして生まれて育ったものは落ちにくくなるので、一度繁殖が始まると、環境を大きく変化させない限り安定して繁殖し続けてくれます。

 

数匹とか買ってくると、肥料添加とかピートモス入れた時とか...なにかしらのきっかけでポツポツ落ちて全滅しちゃうなんていうこともあり得ますが、例えばチャームとかで数十匹とか百匹とか大量に買っちゃえば、抱卵個体がいくつも入っていたりするので、スグに稚エビが見られるようになります。

 

稚エビは数ミリのサイズなので、プロホースで底を探ったりすると知らないうちに吸いだしてしまっていたり、フィルターの中に吸い込まれていたりします。

出来れば水槽内やフィルターの掃除の時には、稚エビをしっかり発見して水槽に戻してやるようにしましょう。

 

けっこう気をつけていても見逃してしまうこともあるのですが、稚エビが混じった水を外部に捨てるのは出来れば避けたいですね。

販売名ミナミヌマエビは、実質シナヌマエビで「外来種」ですから。日本固有のミナミヌマエビの遺伝子汚染が問題になっています。

水を捨てる時は目の細かいネットなどで濾して、稚エビを流出させないようにしましょう。

 

外部フィルターの給水口にはストレーナースポンジを付けて、稚エビの吸い込みを防ぐようにしましょう。

もっとも通常の荒目のものだと生まれたばかりの稚エビは吸い込まれちゃいますけど。それでも付けて無いよりは遥かにマシです。完全に吸い込みを防ぐにはかなり細かい目のものにして頻繁にメンテナンスするしかないですね。

 

もしも水草よりもエビを優先するなら、フィルターは、もう間違いなくエアレ式のスポンジフィルターがベストだと思います。

 

追記 オスメスの見分け方

  • オスよりメスの方が、大きい。
  • オスよりメスのほうが、ずんぐりむっくり。背中が丸みを帯びている。卵を抱くために腹肢が大きく腹側にもまるみを感じる。
    オスのほうが全体的にスリム。腹のラインも直線的。
  • オスの模様はハッキリしていてキレがある。メスの模様はオスよりも曖昧。特にヤマトの場合は、ドット模様...点状の模様なのがオス。ドットが伸びて破線状になっているのがメス。この頁の最初に出ている写真に写っているのはメス。
  • オスは活発に動き回る。よく泳ぐ。
    メスは動きまわらずにひたすら食べている。
  • 体のサイズに対して触角が長いのがオス、短いのがメス。
  • (あたりまえだけど)背中に卵巣の影が見えれば、あるいは抱卵していれば...メス。

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