立ちあげ期の管理
ここでは、私が「高回転型」と呼んでいる有茎草など成長力のある水草を大量に使った場合の立ち上げ期間中の管理のポイントについて説明します。
水槽の構成としては、こんな内容...大量の水草を高成長させることができる水槽環境...ソイル・大光量・CO2強制添加...のものですね。
このやり方での立ち上げでは、最初からコケだらけになったり・魚がアンモニアでやられたりということは殆どないわけですけど、立ちあげ期間のところで説明したように、それでも最初から水槽環境が安定しているというわけではありません。
要点は、
- 水換え
- エアレーション
- 水質チェック
- 魚の数/魚の投入タイミング/エサ
- トリミング
- 掃除
- 活性炭などの活用
- 施肥
です。
水草を大量に元気よく育てるためには比較的肥料分があるソイル(黒ぼく土系)を使うことになります。
そうすると窒素分に限らずいろいろな土壌成分がセット初期はいっきに大量に溶出してきます。
これを避けるために最初の1週間は割と頻繁に水換えをして過剰な成分を排出しておいた方が安全です。
どの程度水換えをすべきかというのは、ソイルの栄養分や最初に植えた水草の量などにもよるわけですが、よほど養分豊富なソイルを使っていたり、底床内に腐葉土を仕込んだりとかしない限りは、その上で大量の有茎草などを植えている場合であれば、1/3換水を2−3日おきに2回続けてやるくらい...つまり最初の週だけ2回程度で充分だと思います。
あるいは、水槽にセットする前にバケツにソイルを入れて、塩素抜きをした水を張って、その水を数日おきに入れ替えるということで、予め最初期に溶出する栄養分を抜いたソイルを使うこと言うことであれば、最初から週1回換水ペースでも大丈夫ですけど。
まー、こういうことするとソイルが傷みやすくなるので、水槽の中で養分放出させた方がより良いですけどね。
セット初期に集中的に水換えを行った場合、かなり早い時期からカリウム不足になることがあります。他の養分よりカリウムは本当に溶出しやすいんですよね。
集中的な換水を行うほどに何か水草の調子が悪いなと思ったらカリウム不足も疑ってみてください。
大量の有茎草に大量の光、CO2添加をしていれば、日中は光合成で酸素飽和に近い状態になるはずですけど、少なくとも立ちあげ期だけは夜間エアレーションをしましょう。
何と言っても酸素要求量の多い硝化バクテリアを確実に・速やかに増加させていくため。
(あまり期待しないほうが良いですけど)過剰なアンモニアを気化させて抜く効果もあります。
これらの点で特にまっ更からの硝化サイクルが全く出来ていない状況から立ち上げでは、エアレーションは必須だと考えておいたほうが良いです。
また、万が一真新しい機材や流木などから有毒な揮発性成分とかが出ているような場合でもそれを抜いていく効果があります。...もしそんなものがあれば取り出さなきゃダメですけど、なかなか分からないですからね。
立ちあげ期は水質が不安定になったりします。ソイルの性質やその他底床に仕込むもの、石や流木などにも拠りますけど、想像以上にpHが落ちていたり、あるいは最初から弱アルカリになっていたりします。数日おきにpHはチェックして安定するところを把握しましょう。
水草や魚の選び方にも拠りますけど、大抵は6.5程度が理想的だと思います。6を大幅に切っていくと硝化バクテリアの種類によっては活動が著しく鈍ってしまうこともあります。その他、弱酸性で維持しておいたほうが良い理由はここを見てください。
通常の水槽の立ち上げでは、NO2(亜硝酸塩)濃度などを計って硝化サイクルの立ち上がりを確認するわけですが、大量の有茎草を最初から入れている場合は殆ど測定できないですね。
もちろん測定しておくに越したことはないですけど。
魚の投入タイミング・エサやりなど
大量の成長力のある水草があれば、最初からアンモニアやNO2で魚がキケンにさらされることは殆どない...とは言っても、やはり立ちあげ直後の水槽は水質など様々な点で不安定です。水換えを頻繁に行えばそれだけで魚にはかなりのストレスになりますし。
なので、少なくとも最初の1週間は、魚を入れるのはやめておきましょう。また入れるにしても比較的強い種類のものから少しずつ増やしていくってのは基本ですよね。60cm水槽でも最初はネオンテトラクラスを5匹とかから始めたほうが良いですよ。最後は100匹くらいまでイケちゃうとしても。...水草水槽は100匹入れる人は居ないと思うけど。
リセットではなくて全くの新規立ちあげの場合は、特にそうですね。
ちなみに「ネオンテトラクラスの」...と書きましたけど、小型カラシンの中で比較的強い魚を選ぶなら、グローライトテトラとかプリステラとかはかなり強いですね。
エサも最初の1ヶ月くらいは、本当にごくわずかにしておきましょう。硝化バクテリアが少ない...水草が大量にあるとなおさら少なめになる...ということは、それだけ最初はバクテリアのニッチが大量に空いているということで、例えばエサを増やしてしまうと有機栄養バクテリアや水カビなどが大繁殖して白濁しちゃうとかそういうこともあり得るわけです。
最初から、魚を入れておかないと硝化バクテリアが育たないのではないか?という人もいるかもしれませんが、それは大磯砂とかの場合の話です。ソイルは多かれ少なかれ窒素分を含んでいます(じゃなきゃそもそも水草が育たない)ので、魚が居なくても硝化バクテリアの定着は少しずつ始まります。
大量の有茎草を高成長させるということは、立ちあげてからアッという間に...2−3週間で最初のトリミングが必要になるということです。
この時に意識しないといけないのは、他のページでも書いているように、水草が多いからこそ=窒素分があまり水に溜まらない=だからこそ硝化バクテリアの繁殖が遅めになっているということがあります。硝化バクテリアの繁殖が充分であれば、かなりトリミングしても2−3日で水草の窒素分の吸収力が減った分を補うだけ硝化バクテリアの活動が高まって補ってくれるのですが、立ちあげ期にはそうはいきません。
なので、トリミングは出来るだけ次のようにやりましょう。
- 出来るだけ1回にカットする水草の量は、全体の1/3以下、できれば1/4以下にする。
- 2-3日以上間を開けてから、次の1/3とかをトリミングするようにする。
- トリミングした部分の差し戻しが可能であれば出来るだけ差し戻しを行う。
水草がしっかりと根張りするまでは...少なくとも2週間くらいは底床面の掃除はしない方がよいですね。
そもそもソイルだとあまり過剰な掃除は...ソイルを動かしてしまうような掃除はしない方が良いわけですけど。
ただトリミングクズが大量に出た時や、最初に植えた水草が(できれば立ちあげは、種類や状況にもよるけど大抵は水中葉のほうが良いですけど)水上葉で、枯れ葉が沢山出ているとかっていう時は、出来るだけ丁寧に葉クズや枯葉はとっておいたほうが良いです。
活性炭などの活用
このやり方だと「いきなり最初からアンモニアやNO2は検出限界以下」とは言え、そこはやっぱり出来るだけ安全に行きたいですよね。
それと、流木やソイル、底床内に仕込んだピートや腐葉土などのいろいろなものから色が出たりとかもありますし、私は立ちあげの最初の1ヶ月弱は、外部フィルターにブラックパッドとかカーボンパッドとか呼ばれる活性炭入のものを入れています。
絶対に必要かと言えば、必要ないですけど。
むしろこれがあると、立ちあげを遅らせちゃうって面もありますし。
ちなみに活性炭は、若干ですがpHを上げます。
大量の水草を使うやり方だと、硝化バクテリアが充分に増える前に、ソイルの肥料が切れちゃうことがあります。
もちろん最初にかなり栄養豊富なソイルを選んでいたり、底床内に遅効性の肥料などを仕込んでいれば別ですけど、立ちあげ期の安全性を重視すると、大抵はそうなります。
下手すると1ヶ月で肥料切れになります。
水槽が完全に安定しちゃうと、割と雑な施肥をしていてもそれほど決定的に酷いことにはならないのですけど、立ちあげ期の施肥は慎重に行く必要があります。
底床内の肥料分が減ってきた!なら施肥だ!ってドバってやると、きっと崩壊しますね。コケ地獄とかで。
まずは全体の成長の落ち具合...特に窒素分に良く反応する水草...例えばポリスペルマとかの成長具合を見て、全体が急減速し始めているようなら、このあたり(必須元素)も見てもらって何が足りないのかを把握しておきましょう。
ひとまず、窒素不足などであれば、このあたりのタイミングでエサの量を増やすというか制限していた量を通常モードにしましょう。それだけで解決することも多いです。
またカリウム不足なら、液肥かイニシャルスティックをおずおずと少しずつ入れていくってことになりますね。
あるいは両方必要かもしれません。
最後にこんな感じの立ちあげ期の気遣いをいつ頃まで続けるべきか?ですが、
やはりおおよそ1ヶ月半くらいを目安にしてください。
その後、例えば徐々に換水間隔を開けていって、半年もすれば数週間以上水換えがいらなくなっているかもしれません。...こればっかりは環境によるので断言できませんが。
肥料添加もそれほど細心の注意を払う必要もなくなっていくかもしれません。
魚の収容数も徐々に増やしていって、60cm水槽でネオンテトラクラスのものを4−50匹とか余裕すぎる!ってくらいになっていくでしょう。
ただ比較的良い傾向にある水槽でも、半年経つくらいまでは、どこかしらに微かに不安定な要素があって、気持よくトリミングをすると不安定になって油膜が大量に出てくるとか、そういうこともあると思います。
なので、1ヶ月半過ぎてもあまり気を抜き過ぎないほうが良いですね。