リンのコントロール
必須元素別の理解など各所で触れているように、水草水槽で最もコントロールが難しい栄養素はリンだと考えています。
意識的に水草が使用する量を超えないようにしていかないと、長期的には必ず過剰になっていくハズです。
リンの過剰は、黒ヒゲを招いたり、pHをやたらと低くしてしまったり...と様々な問題を引き起こします。
では、どうコントロールするのか?
考え方は大きく2方向あると思います。
- リン酸除去剤をフィルターに入れるなどする。
主にアルミナに反応させて吸着除去させる考え方ですね。
鉄とも強く結びつくので、鉄釘を入れただけでも水中のリン酸は吸着されます。...赤錆が出るけど。 - 肥料分のバランスを取って、水草に使い切らせる。
ここでは、後者のことについて書きます。
いくら水草中心の水槽でも、大抵は少しは魚がいるでしょう。
魚がいれば、エサをやることになります。
肥料添加を除けば、大雑把に言って水槽の外から入ってくる栄養分は殆どエサに由来するわけですね。
ここで問題なのはエサの窒素・リン比なんですが、
大抵のエサの場合、窒素量の半分くらいリンが入っているとか、ものによってはリンの方がずっと多いとか...とにかく水草が使う窒素リン比に対してずっとリンが多いんです。
完全な沈水性の水草が使う窒素リン比は10:1くらい*ですし、水草水槽のレイアウトで多く使われる湿地植物ではもう少しリンの使用量が大きい可能性も高いですけど、それにしても実を成らせたりする農業・園芸植物が使う様な割合のリンは使わない...遥かに少ないはずです。
水草が使う窒素リン比は2:1みたいに言っているところもよく見かけますけど、それは明らかに農業・園芸由来の知識です。
しかも窒素の方が水換えなどで排出されやすい。
*:琵琶湖南湖の水草の生元素含有率とそれらの比
リンク先のp.110
だからリンが余ってしまう。
ならば(水槽内の水草の活動量全体がかなり大きい場合...常に肥料分を要求するような場合...高回転型の水槽に限りますが)、リン以外の元素添加を増やしてバランスをとってやれば良いわけです。
微量元素を除けば、まずはカリウムですね。
次に窒素です。
実際に添加するのはかなり微量にはなるけれど、リンを含まない窒素肥料を意識して添加していくことによって栄養バランスを取り、リンを使い切らせることができるはずです。
リンを使い切らせることができるならば、掃除の必要性もかなり薄れるはずです。
もちろん、どこまでリンを意識的に減らしていけば良いのか?というのは、水草の活動量と魚(給餌)の量のバランスなど個々の水槽によって異なるはずです。
リンは極めて重要な元素で、「足りない」という状況になってしまうと今度は様々な成長障害を招きます。
それに、リンが足りないとグロッソは綺麗にビッタリ這ってくれませんし、グリーンロタラも枝垂れてくれません。
トリミング後の新芽の発芽も悪くなります。
だから長期的に様子を見ながらバランスを取っていくしかないわけですね。
で、そのカギを握るのは(カリウム等は当然として)、窒素です。
あくまでも私の場合ですけど、以下のステップを繰り返すことでコントロールしています。
- リンを減らす。
- 基本的には最も失われやすいカリウム主体のミネラル液肥(0-0-3)を定期的に底床供給器に入れる。
- 水草の育ち具合を見て...例えばグロッソの葉が小さくなってくるなどの窒素不足を感じたら腐植酸アンモニウム液肥(0.2-0-0)を底床供給器に入れる。腐植酸アンモニウム液肥はカリ液肥と相性が悪いので施肥タイミングには注意。
- 必要に応じてリンを足す。
- 充分に光量があるはずのところのグロッソがランナーをあまり出さずに縦伸びするような状況になってきたら...つまり底床内のリンが枯渇してきたと感じられたら、必要に応じてリンを含む液肥(0.2-0.1-0.1)を底床供給器にかなり控えめに入れる。